可変電源ZK-4KXと電子負荷XY-FZ25/FZ35
はじめに
AliExpressでZK-4KXという可変電源を見つけたので購入しました.端子を取り付けて3Dプリンターでケースを作りました.これまで可変電源はいくつも作ってきましたが,このモジュールは入力電圧の幅が5~30Vと広くて,降圧だけではなく昇圧もできるという特徴があります.電圧は0.01V単位で調節できて,電流は最大3Aで制限を設定することもできます.
似たようなモジュールで,XY-FZ25という電子負荷も以前購入しました.XY-FZ35という最大電力だけ異なるモデルも存在します.電子負荷は,充電池やDC-DCコンバータの評価をする際にあると便利なので以前から自作したいと思っていたのですが,色々な機能もついているので既製品を購入してしまいました.
今回は可変電源も電子負荷も単にケースに入れただけで,電子工作と言えるようなことはしていません.昔は電子工作で使うケースは主にタカチのSW-125に統一していたのですが,最近は3Dプリンターで自作するようになりました.ただし幅と奥行きはSW-125に合わせています.これまでにこのケースに収めた自作物を集めて記念写真をとってみました.なお可変電源の端子にはサトーパーツのT-40を使ってきましたがしばらく前に廃品種になってしまいました.この端子は小型でテスターのピンも差し込めて便利だったので残念です.
しばらくこの可変電源ZK-4KXを使っていたところ不具合が起こりました.
3.3Vを出力してESP32を動かそうとしたところ,ESP32が正常に起動しませんでした.
その時の可変電源の出力電圧をオシロで見たところ,電源スイッチを入れてから350ms程度の間は出力電圧が不安定であり(下図左端),これがESP32の起動失敗の原因となっているようでした.
無負荷状態で電源スイッチを入れた場合が下の左から2番目の図で,急激な落ち込みはないもののやはり350ms程度の間は電圧が不安定です.
なお無負荷状態で電源を入れて,しばらくしてからESP32を接続したところ正常に起動したので,突入電流自体の問題ではなくこの可変電源の電源スイッチ投入時の動作が問題だと思います.
これらは入力に5VのACアダプターを使用していた場合ですが,12VのACアダプターを使った場合も調べてみました.
その場合,やはり電源スイッチを入れた直後は電圧が不安定ですが,さらに3.3Vに出力を設定しているにも関わらず最初に4V程度出力されていました.
この問題は,出力側にコンデンサーを取り付けても解決しません.電源スイッチを入れる段階ではコンデンサも充電できていないからです.
またこの可変電源の回路が不明なので,電源スイッチの前にコンデンサーを入れるのも困難です.
一番簡単な解決法は,この可変電源と出力端子の間にスイッチを入れることだと思います.
それにより電圧が安定化した後で電源を出力させることができます.
もう一つの利点として,ロータリーエンコーダを押して電源をオン・オフするのは操作しづらい上に,時々誤って回転させて電圧を変化させてしまうので,それらを解決できます.
ケースのSTLデータ
操作方法
この可変電源と電子負荷は多機能なのにマニュアルが付属せずに使い方が分かりにくいので,メモ代わりにここに情報を残しておきます.
可変電源ZK-4KX
仕様
- 入力電圧: 5.0-30V
- 出力電圧: 0.5-30V
- 出力電流: 連続3A/ピーク4A
- 出力電力: 自然放熱時35W/放熱強化時50W
- 電圧表示分解能: 0.01V
- 電流表示分解能: 0.001A
- 変換効率: 約88%
- ソフトスタート機能: 有り
- 保護機能
- 入力逆接続保護
- 出力逆流保護
- 低電圧保護(LVP): 4.8~30Vの範囲で調節可能で初期状態では4.8V
- 過電圧保護(OVP): 0.5~31Vの範囲で調節可能で初期状態では31V
- 過電流保護(OCP): 0~4.1Aの範囲で調節可能で初期状態では4.1A
- 過電力保護(OPP): 0~50Wの範囲で調節可能で初期状態では50W
- 過容量保護(OAP): 0~60Ahの範囲で調節可能で初期状態では無効
- 過時間保護(OHP): 0~100hの範囲で調節可能で初期状態では無効
- 過温度保護(OTP): 80~110℃の範囲で調節可能で初期状態では110℃
- 処理周波数: 180kHz
- 寸法: 79x43x26mm
- 重量: 69g
通常画面の使い方
この画面は電圧や電流等の情報が表示される画面です.
- SWボタン(短押し): 電流A/電力W/容量Ah/時間hの表示を切り替える
- SWボタン(長押し): 出力電圧/入力電圧/温度の表示を切り替える
- U/Iボタン(短押し): 電圧・電流設定画面へ移動する
- U/Iボタン(長押し): パラメータ設定画面へ移動する
- ロータリーエンコーダ(短押し): 出力のオン/オフを切り替える
- ロータリーエンコーダ(左回し): 出力電圧を下げる
- ロータリーエンコーダ(右回し): 出力電圧を上げる
電圧・電流設定画面の使い方
この画面は出力電圧と最大出力電流を設定する画面で,設定する桁が点滅します.
10秒間何も操作しないと通常画面に戻ります.
- U/Iボタン(短押し): 電圧値の設定/電流値の設定/通常画面へ切り替える
- ロータリーエンコーダ(短押し): 設定する桁を移動する
- ロータリーエンコーダ(左回し): 指定した桁の値を減らす
- ロータリーエンコーダ(右回し): 指定した桁の値を増やす
パラメータ設定画面の使い方
この画面は各種のパラメータを設定する画面です.起動時に出力をオンにするかオフにするか(OPEN-ON/OFF),7つの保護機能のパラメータ(LVP/OVP/OCP/OPP/OAP/OHP/OTP),3つのキャリブレーションパラメータ(CAL-IN-V/CAL-OUT-V/CAL-OUT-A)を設定できます.
キャリブレーションパラメータは精度を確保するため電圧は12V以上,電流は1A以上で設定の変更ができます.
- SWボタン(短押し): 設定するパラメータを切り替える
- U/Iボタン(長押し): パラメータ設定画面を終了して通常画面に戻る
- ロータリーエンコーダ(短押し): 設定する桁を移動する
- ロータリーエンコーダ(長押し): OPEN-ON/OFF設定時はオン・オフを切り替えキャリブレーションパラメータ設定時は変更を反映させる
- ロータリーエンコーダ(左回し): 指定した桁の値を減らす
- ロータリーエンコーダ(右回し): 指定した桁の値を増やす
保護機能画面の使い方
この画面は保護機能が作動した場合に出現し,作動した保護機能の名前が表示されます.出力も自動的に停止します.
何かボタンを操作をすればこの画面を終了します.
注意事項
- 本モジュールの入力と出力を短絡してはならない.定電流機能が動作しない.
- 出力の負荷が必要とする以上の電力を入力に供給すること.
- 最大電力を出力する場合は入力電圧が8V以上でなければならない.入力電圧が5Vの場合の出力電力は約15Wとなる.最大出力電流は最大出力電力の範囲内で4Aであるため,例えば17Vを出力する場合は2Aを超えてはいけない.
- 出力が3Aや35Wを超える場合は放熱対策をしなければいけない.
- 低電圧保護機能により入力電圧が4.8V(これは初期値であり変更できる)を下回った場合には出力が自動的に切断される(電流が大きい場合は配線の抵抗による電圧降下を考慮すること).
電子負荷 XY-FZ25/FZ35
仕様
- 入力電圧範囲: DC 5.0~30.0V (逆接続保護機能付き)
- 負荷電圧範囲: DC 1.5~25.0V(逆接続保護機能付き)
- 負荷電流範囲: 0.00~4.00A(XY-FZ25)/5.00A(XY-FZ35)
- 放電電力: 25W(XY-FZ25)/35W(XY-FZ35)
- 定電流精度: ±(1%+3digits)
- 電圧精度: ±(0.5%+1digit)
- 保護機能
- 過電圧保護(OVP): 初期状態で25.2V (変更可能)
- 過電流保護(OCP): 初期状態で4.10A(XY-FZ25)/5.10A(XY-FZ35) (変更可能)
- 過電力保護(OPP): 初期状態で25.5W(XY-FZ25)/35.5W(XY-FZ35) (変更可能)
- 低電圧保護(LVP): 初期状態で1.5V (変更可能)
- 過温度保護(OTP): 初期状態で80℃ (変更不可能)
- ファン回転数: 5800±10%RPM(XY-FZ25)/8000±10%RPM(XY-FZ35)
- 寸法: 79x43x55mm
- 重量: 87g
- シリアルポート: 9600bps/8データビット/1ストップビット/パリティビット無し/フロー制御無し
機能の説明
- 初期状態
電子負荷のオン・オフの状態は電源切断時に保存され,次回電源を入れた際に同じ状態になります.
- 放電容量と放電時間の計測
これらの値は負荷電流がゼロ以外になると計測を開始し,ゼロになると停止します.
- 最大放電容量(OAH)と最大放電時間(OHP)の設定
これらの設定が有効にされると,放電した容量や時間が設定された値を超えると電子負荷が停止します.
- データグループ
DAT0とDAT1の2つのデータグループが存在します.DAT0は直前の容量と時間を示しDAT1はこれまでの容量と時間を示します.
- 保護機能が作動するとLCDが点滅して,作動した保護機能の名前が表示されます.
- 電池の放電テストを行う場合はLVPを適切に設定することで過放電を防げます.
操作画面の使い方
- 本機の電源が入ると操作画面になります.ここではON/OFFボタンを短く押すことで電子負荷の動作をオン・オフしたり,ロータリーエンコーダを回すことで負荷電流を変えられます.
- ロータリーエンコーダを短く押すことで表示を変えられます(電流/電力/容量/時間).
- どの表示を行っていてもロータリーエンコーダを回すことで電流の表示になります.
- 電流を表示している時にON/OFFボタンを長く押すと入力ロック機能をオン・オフできます.入力ロック機能が有効な時は"|-"という記号が電流値の前に表示され,ロータリーエンコーダを回しても負荷電流は変わりません.
- 容量/時間を表示している時に,ON/OFFボタンを長く押すと値をリセットします.
設定画面の使い方
- 操作画面でロータリーエンコーダを長く押すことで設定画面になります.
- ロータリーエンコーダを時計回りに回すと設定中の値が増え,反時計回りに回すと減ります.ロータリーエンコーダを短く押すと変更する値を切り替えられます.
- 最大放電容量(OAH)/最大放電時間(OHP)を設定している時に,ON/OFFボタンを短く押すとそれらの機能のオン・オフを切り替えることができます.オフの場合は画面に"----"と表示されます.
- 最大放電容量(OAH)を設定している時にON/OFFボタンを長く押すと値の範囲を変えられます(9.999Ah/99.99Ah/999.9Ah/9999Ah).
- 値の設定変更が終わったら,ロータリーエンコーダを長く押すと設定した値を保存して設定画面を終了します.
2020-11-30 ページ作成
2021-11-28 ページ更新
T. Nakagawa