小型スピーカーとD級スピーカー&ヘッドフォンアンプ


はじめに

6年前にアンプを作ってからずっと使用してきました. 交換する予定はなかったのですが,2020年2月にコロナの影響で在宅勤務となり,PCの作業環境を快適にするためにディスプレイスタンドを使うようにした結果スピーカーの置き場所を変えたくなり,以前よりもさらにコンパクトなスピーカー欲しくなりました. そこでついでにアンプも作ることにしました.

スピーカーの設計と製作

スピーカーを設置する場所の制約により,サイズは一辺87mmの立方体としました. 音色はアンプで調整することとしてシンプルな密閉型のエンクロージャーです. 5mmのMDF板をCNCで削り出しました. スピーカーユニットは昔購入したF77G98-6というものです.

完成したスピーカー

アンプの設計と製作

これまでと同様日常用のアンプとして便利なように,スピーカーアンプとヘッドフォンアンプを組み合わせることにしました. 今回のアンプ設計の方針としては,(1)以前よりもさらに小型で,(2)省エネでエコにすることを目標にしました. 音質に関しては,最近のアンプ用ICは十分に高性能なので懸念はありません. (1)については,ケースにタカチのYM-65を使うことにしました.これは65x20x50mmのサイズで,前回使ったYM-90よりもさらに小型になります. (2)については,アンプの電源を12Vではなく5Vとして,またノイズの原因となるDC-DCコンバータを使わないことにしました. 入手が容易な部品を使うことにして,スピーカーアンプにはTPA3118D2を,ヘッドフォンアンプにはLME49726を使いました.

スピーカーアンプで使用したのTPA3118D2はフィルタフリーのD級アンプICです. アンプのゲインについては前回は12.1dBでも十分でしたが,今回使用するTPA3118D2は最低ゲインが20dBなのでこの値にしました. コンデンサーはフィルムコンデンサーを使い抵抗は金属皮膜抵抗です.

ヘッドフォンアンプには,前述のとおりオーディオ用オペアンプのLME49726を使用します. これは低歪みで出力電流の高いrail-to-railオペアンプです. 非反転アンプとして使います. 前回のアンプではスイッチドキャパシタで負電圧を生成しました. この方法は回路全体でグランドを共通化できるという利点もありますが,ノイズ源となるDC-DCをアンプで使うことになり,またLME49726はそもそも動作電圧が最大5.5Vしかありません. 今回はシンプルにレールスプリッタのTLE2426で基準電位を生成しました.最大で20mAしか供給できませんが今回の用途では問題ない容量です. ヘッドフォン使用時にはスピーカーアンプを停止する必要があります. 前回はデジットで入手したスイッチ付きのヘッドフォンジャックを使用しましたが,今回は入手できなかったのでマル信のMJ-352W-CというジャックにFETを使った検出回路を付けました. ヘッドフォンが差し込まれるとFETのゲートに接続された端子がHi-Zとなり,プルアップのためドレインがLowになりスピーカーアンプがdisableされる仕組みになっています. ヘッドフォンアンプ用オペアンプには常時電流が流れていますが,静止時電源電流は0.7mAとLEDを点けるよりも低いので許容範囲だと思います.

今回のアンプが前回作成したアンプと一つ異なる点は,CNCで専用基板を用意したことです. そのため,より高密度に部品を実装するとともに基板をシンプルにすることができました. ただしCNCでプリント基板が加工できるように調整するのに手間取ったため,アンプが完成したのはエンクロージャーが完成してから半年以上後になってしまいました. 機構部品もすべて基板に固定できるので,基板はケースへ固定せずにボリュームとヘッドフォンジャックだけをケースに固定しています. 金属ケースを使い,さらにスピーカー出力やヘッドフォンアンプでは基準電位が異なるため,ジャック類は絶縁タイプのものを使用しています. これまで作成してきたアンプにはLEDと電源スイッチを付けてきましたが,電源を切ることはほとんどなく,またちょうど目線に入る位置にアンプを設置するためLEDの光が常に目に入ることから,LEDや独立したスイッチは取り付けないこととしてスイッチ付きボリュームで電源を切れるようにしました.

回路図
配線図
配線後の基板
ケースに入れた状態
前面
背面

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2020-12 製作
2021-04-10 ページ作成
T. Nakagawa