長波JJYの受信


はじめに

電波時計の時刻を合わせるための標準電波(JJY)を出している送信所が日本に2か所ありますが,それを受信して受信報告書を送ると受信証(ベリカード)をもらうことができます.今年(2019年)は,40kHzの標準電波を出している福島県のおおたかどや山送信所が開局20周年を迎えるということで,通常とは異なる記念カードを発行しています.そこで40kHzの標準電波を受信して受信報告書を出すことにしました.またせっかくなので佐賀県にあるはがね山送信所からの60kHzの電波も受信することにしました.

(2021年10月追記: JJY用のソフトウェアラジオをその後作成しました).

アップコンバーターとアンテナ

標準電波は40kHzや60kHzという長波帯のCW変調された電波です.今回はパソコンにワンセグチューナーを接続したSDR (Software Defined Radio)を使いました.ただ使用したワンセグチューナー(RTL2832Uチップを使ったDS-DT305)は受信できる最低周波数が22MHzなので,長波の信号をワンセグチューナーで受信できる周波数に変換するアップコンバーターを作成しました.アップコンバータでは,NE612 (SA612)を使って周波数変換を行います.局発周波数は40MHzとしたので,40kHzの電波は40,040kHzに変換されて受信することになります.回路図と配線図は下記のとおりです.入力部には30MHzのローパスフィルターが入っています.NHKの中波放送を受信して動作確認を行いました.

回路図
配線図
ケースに収めた状態

アンテナをいくつか作成して試しましたが,特に持ち運び可能なコンパクトなアンテナとしてバーアンテナと同調形ループアンテナを作成しました.
バーアンテナの方は,φ10x200mmのフェライトコアを3本を束ねたものに0.2mmのUEWを160回ほど巻きました.ループアンテナの方は,一辺が180mmの六角形で,3Dプリンターで枠と土台を作り外径1.75mmのケーブルを44回巻きました.どちらのアンテナもコンデンサを付けて受信周波数に同調させて使用しますが,コンデンサの容量はFRMSを使って調整しました.なおFRMSで調整する際はアンテナに2次コイルを巻いて使用しましたが,実際に電波を受信する際はNE612のインピーダンスが高いためか1次側のコイルを直接入力した方が感度が高かったのでそのようにしました.

バーアンテナ
ループアンテナ
40kHzに同調したバーアンテナ
60kHzに同調したバーアンテナ
40kHzに同調したループアンテナ
60kHzに同調したループアンテナ

受信

SDR受信用のソフトウェアとしてHDSDRを使いました.使い方は以下のとおりです.

都内のマンション2階(北向き)では40kHzの福島局は強力に受信できましたが,60kHzの九州局は時間帯によってはかろうじて1秒おきのトーン音が聴こえるけれどモールスの呼出符号をはっきりと聴き取るのは難しいという受信状況でした.そこで近くの公園まで行って受信したところ,60kHzの呼び出し符号もはっきりと聴き取れました.野外でも受信できるように,Windowsタブレットにワンセグチューナーを接続し,アップコンバータの電源はスマホ用のモバイルバッテリーで供給しました.なおアップコンバーターでTCXOを使わなかったのは失敗で,電源を入れてから10分ほどは周波数がドリフトするので受信周波数を調整する必要がありました.

受信装備一式
40kHzの受信状況(時計は不正確)
長波JJYを受信したのは今回が初めてではなく,10年前(2009年)におおたかどや山送信所が開局10周年の記念カードを発行した時にも40kHzと60kHzの電波を受信して受信報告書を送ったことがあります.その時は大阪に住んでいて,どちらの送信所からも大きく離れていないためかそれほど苦労せずに室内で受信できた記憶があります. 当時の受信報告書によれば次のような構成で受信を行いました:
その後2011年にはがね山送信所が開局10周年を迎えた時にも受信を試みましたが,この時は東京に住んでいて,受信機やアンテナを色々と試したけれど60kHzの受信がうまくいかなかったという苦い思い出があります.今回ようやく受信することができました.
今回もらったベリカード
2009年にもらったベリカード

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2019-12-06 ページ作成
(2019-11 受信)
T. Nakagawa