Mini-ITX用のケースと電源


はじめに

自宅サーバとして,Linux(昔はFreeBSD)のマシンを24時間動かしています. 自宅サーバを動かし始めたのは2002年で,最初は当時流行っていたキューブ型PCを使おうと思っていましたが,冷却ファンの音が非常に大きく,また小さなケースで熱がこもりやすくてファンレスでの使用は不可能でした. そこでちょうどそのころ販売された,VIAのEPIA-5000 (EPIA-E533)というマザーボードを使うことにしました. EPIA-5000はMini-ITX規格第1号のマザーボードであり,処理速度は当時でも遅かったものの,消費電力がかなり小さく,ファンレスで省スペースで値段も安かったので,自宅サーバに使うことにしました. キューブ型PCで失敗した経験から,ファンレスで運用する場合はケースの開口部の大きさが重要であることを認識しましたが,市販のPCケースではファンレスでの使用があまり考慮されていなかったのでケースを自作しました. また電源も自作しましたが,これが後で説明するケースAと電源Aです. その後,マザーボードは同じままでケースと電源を作り直したのがケースBと電源Bです. そして2013年の末にマザーボードをIntelのD2700DCにして,ケースFと電源Fを製作し自宅サーバをリプレースしました. このマザーボードもMini-ITX規格ですが,2コア4スレッド2.13GHzのCPUと64bit OSになりました. これらの3つの自作ケース・電源以外にも,これまでにいくつかMini-ITX用のケースと電源を作ってきたので紹介したいと思います.


ケースA: 横置き2階建てケース

ケースと言える代物か分かりませんが,これが最初に作ったケースです. 真夏でもCPUの温度上昇を心配しなくてよいように,マザーボードの四方を遮るものは何もなく,上にアルミのパンチング板が乗っただけのものです. アルミ板を2枚使った2層構造になっていて,1階が電源で2階がマザーボードです.2.5インチHDDがマザーボードの真下にあります. マザーボード上に灰色の配線が這っていますが,サーミスタとAVRを使った温度計で外気,HDD,CPU,電源部の温度をモニターしていました.

ケースA外観(1)
ケースA外観(2)
ケースA外観(3)

ケースB: 縦置きサンドイッチ型ケース

ケースAよりもコンパクトでシンプルなケースです. これもケースというにはおこがましくて,2枚のアルミ板を黄銅スペーサで連結しただけのものです. 2.5インチHDDと電源ユニットが,マザーボードとアルミ板の間に入っています. ケースAを長い間使っていましたが,水平面のスペースを取る上に埃がたまりやすく,またマザーボードが縦向きの方が放熱効率が良さそうだったのでこの構造にしました.

ケースB外観(1)
ケースB外観(2)
ケースB外観(3)
ケースB外観(4)
ケースB外観(5)

ケースC: 縦置きサンドイッチ型ケース2

これは予備機というか,余っていたマザーボード用に作ったケースです.背の低いメモリを使ってケース2よりも薄くし,HDDの代わりにコンパクトフラッシュを使っています.

ケースC外観(1)
ケースC外観(2)
ケースC外観(3)
ケースC外観(4)

ケースD: 縦置きサンドイッチ型ケース3

これはMini-ITX用のケースではなく,MSC-1610というMini-ITXよりも一回り小型のマザーボード用に作ったケースです. CPUはVIA C3 (933MHz)を使い,アルミブロックをCPUのヒートスプレッダと3mmのアルミ側板の間に挟みこんで放熱するようにしています.

ケースD外観(1)
ケースD外観(2)
ケースD外観(3)

ケースE: アクリルケース

これまではアルミ板でマザーボードを挟み込んだだけのケースでしたが,これはアクリル板で作った箱型のケースです. このケースはファンレスではなく,前面に小型ファンを付けて換気するようにしています. やはりアルミではなくアクリルだと少し華奢になってしまいます.

ケース加工データ

ケースE外観(1)
ケースE外観(2)
ケースE外観(3)

ケースF: アルミアングル枠ケース

これが現在の自宅サーバ用ケースです. これまでのケースは,アルミ板やアクリルでケースの側面を作りマザーボードを支える構造でしたが,このケースはアルミアングル材でマザーボードを囲む枠を作り支える構造になっています. 平面部分はプラスチックのメッシュ(プランターの底に敷くもの)です. サイズも見栄えもケースAやケースBに比べて改良されていると思いますが,このケースの欠点は組み立てと分解が非常に面倒なことです. その点,サンドイッチ構造のケースは非常にメンテナンスが簡単です. LEDはアイスブルーとピンクを使用しています.

ケース加工データ

ケースF外観(1)
ケースF外観(2)
ケースF外観(3)

ケースG: アルミアングル枠サンドイッチ型ケース

DN2800MTというThin Mini-ITXのマザーボードを入手したので,それを収めるために作成したケースです. とても薄いMBなので,できるだけ小さいケースにしようと考えました. また,前回作成したケースFは組み立て・分解が非常に面倒だったので,側面はアルミ板のサンドイッチにして,上面と背面(パネルがあるほうを前面としています)はアルミパンチング板を使い,枠はアルミアングル材をエポキシ接着剤で固定しました. サイズは180.3x178.5x35.0mmです. このマザーボードはACアダプタで電源を供給するようになっていて,電源を自作する必要がないので楽です. 消費電力はSSDをつないだ状態でブート時のピーク値が15Wでした. 小さいケースだと配線の取り回しが面倒で,特にマザーボードに付属のケーブルは大きく太く長いので,SATAのケーブルはフレキシブルな短いものを別途購入し,電源ケーブルはコネクタを買って自作しました.

ケース加工データ

ケースG外観(1)
ケースG外観(2)
ケースG外観(3)

電源A

ケースA用に作った電源です.回路図はありません. 上の「ケースA外観(3)」が電源部の写真です. ここで使用しているマザーボードのEPIA-5000は消費電流がかなり少なく小型のACアダプタでも十分容量が足りるので,12WのACアダプタを4つ(+3.3V,+5V*2,+12V)使っています. ソリッドステートリレーでオン・オフの制御をしています. -12VはEPIA-5000では使われないため用意していません.


電源B

ケースB用に作った電源です. 電源Aは市販のACアダプタを組み合わせただけのものなので,簡単で信頼性は高いのですが場所をとります. 電源Aでは4つのACアダプタを使用しましたが,+5Vと+5VSBは同じACアダプタで供給するようにして,また消費電流の少ない+12VはDC-DCコンバータで5Vから生成するようにしたのがこの電源です. +3.3Vと+5Vの2つのACアダプタを使用します. なおEPIA-5000の消費電流は,負荷の高いDVD再生時で+3.3Vが2.43A,+5Vが1.21A,+5VSBが0.04A,+12Vが0.06Aとなっておりこの範囲で電源を設計しているので,これよりも消費電流の多いマザーボードには使えません.

電源ユニットB回路図
電源ユニッBト配線図

電源C

ケースC用に作った電源です. 電源Bと比較して,さらに+3.3Vをシリーズレギュレータで+5Vから作るようにしています. 必要なACアダプタは5Vの1つだけで済みますが,3.3Vは消費電流が大きく効率が悪いので,常時稼動する用途には向いていません.

電源ユニットC回路図
電源ユニットC配線図

電源F

ケースF用に作った電源です. 入力は12V2AのACアダプタで,+3.3Vと+5Vは高効率のDC-DCコンバータ(OKL-T/6-W12N-C)で生成します. 5VSBはあまり電流は必要なくて効率も重要ではないのでHRD050R6というDC-DCコンバータで生成しています. ATX電源にはPWR_OKという端子があり,この信号は電源ユニットがマザーボードからの信号を受けて電力を供給する際にLowからHighを出力します. そのHighに変化するまでのディレイ時間が100msから500msになることが仕様で規定されており,これを守らないとマザーボードによっては動作しません. EPIA-5000の場合は問題なかったので無視していましたが,この電源ではAVRを使って正しいタイミング(約300ms)で信号を出力するようにしています. この電源の基板は上の「ケースF外観(3)」に写っています.

ファームウェア

電源ユニットF回路図
電源ユニットF配線図

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2014-05-18 ページ作成
2015-04-20 ケースGを追加
T. Nakagawa