これまで真空管を使った経験が一度も無くて,何か真空管を使った工作をしてみたいと考えていました.
そんなときに,Yet Another Hybrid Amp (YAHA)というヘッドホンアンプを知りました.
このアンプは真空管(6922)1個とオペアンプ1個を使った非常にシンプルな回路で,高電圧を必要とせず,卓上で使えるサイズにまとめることができます.
上記のWebページによれば,このアンプは以下のことを念頭に置いて設計されているとのことです:
真空管を低電圧で駆動するという少しアブノーマルな使い方をしていますが,上の設計方針は自分の求めているものと合致し実用性も高そうなので,早速作ってみました.
回路図(PDF)
オリジナルの回路をそのまま使いました.
原作者のページでは,各部品の定数の決め方などが詳しく解説してあります.
真空管とオペアンプを組み合わせたアンプはハイブリッドアンプと呼ばれ,真空管で増幅を行い,オペアンプはゲイン1倍のボルテージフォロアでヘッドホンを駆動するためのバッファとして使われています.
真空管のヒーターの電源を定電圧回路にしている作例もありましたが,ここでは真空管に優しそうな定電流回路を使用しました.
ケースは,こちらの作例がとてもデザインが良かったので真似しました.
タカチのYM-50というW50xH30xD45の小型ケースに基板を収めています.
真空管とオペアンプ,コンデンサはケースの外に配置して交換できるようにしています.
コンデンサや入力用のRCAピンジャックは,左チャネルと右チャネルを対応する側に対称に配置しています.
ボリュームのつまみは,質感のあるアルミ製のものを使いました.またケースの加工はフライス盤で行いました.
ケース内のスペースが狭いので上下どちらからでも使える両面スルーホール基板を使いましたが,結局片面しか使わず,半田付け時にハンダが裏側へ流れてしまい作業がしにくかったので,強度が上がった点を除けばこれを使ったのは失敗でした.
抵抗は金属皮膜抵抗です.
LM317は,真空管ソケットのネジを利用してケースの内側から固定します.マイカ板を入れて絶縁し,ケースを放熱器として利用するようにします.
気をつけた方がいいのは,ボリュームの選定です.
ステレオアンプなので2連ボリュームを使いますが,よく見かける金属ケースのボリュームと,小型の密閉型のボリュームを買ってきました.
テスターを二つ用意して,ボリュームを回した際の2つの抵抗の抵抗値を比べたところ,金属ケースの方はかなりの誤差(ギャングエラー)がありました.
一方で小型の密閉型の方は,安い中国製のものですが精度が高く,使用したテスターの誤差未満の違いしかありませんでした.
ケースのサイズも余裕がないので,後者のボリュームを使用しました.
金属ケースのボリューム(上)と小型の密閉型のボリューム(下)
基板表
基板表
ケース加工(上)
ケース加工(下)
全体
上面
正面
背面
完成
ヘッドホンをつないで使用してみました.
最初は電源を入れても音が出てこなかったため工作に失敗してしまったかと思いましたが,しばらくすると音が出てきました.ヒーターが温まるまで音が出ないという真空管の性質はよく聞きますが,初めてそれを体験しました.
オペアンプやコンデンサを交換して遊んでみました.
自分は繊細な耳は持ち合わせていませんが,色々聞き比べてみると音が変化するのが分かりおもしろいです.
このアンプを使って一つ気になった点は発熱についてです.
真空管のヒーターへ供給するための約300mAの電流をLM317で作っていますが,ここで結構熱が発生します.今回はケースを放熱器代わりとしたためケース全体が熱を持ちます.
気になる場合は,もっと大きなケースに入れたり,LM317をケースの外に出して放熱器を付けるのがよさそうです.
MP3プレーヤーとアンプ4種(YAHA,Chu-Moy,TDA1552Q,TA2020)の集合写真